2010/01/06

■ニュース 日本航空

(2010年1月5日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100105-OYT8T00374.htm

 日本航空の再建問題が30日、大きく揺れ動いた。政府内で法的整理を主張する声が大きくなったことを受け、東京株式市場の日航株価はストップ安ぎりぎりの60円まで下がった。関係閣僚は断続的に協議したが、具体策を打ち出すまでには至らなかった。海外を含めた幅広い取引先に信用不安が広がりかねず、緊迫の中の越年となる。(経済部 山下福太郎、栗原健)

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断続協議 閣僚の溝深く / 法的整理急浮上に戸惑い
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◇閣僚どなり合い

 30日午前、首相官邸の会議室は険悪な雰囲気に包まれた。国土交通省や財務省、内閣府など、日航再建の関係閣僚が集まった協議で、資金繰り支援策を巡って折り合いが付かず、「それはあなたが決めることじゃないだろう!」などと、閣僚同士がどなり合う場面もあった。

 政府出資の企業再生支援機構が29日、日航の主要取引銀行の経営首脳に対し、法的整理をした上で支援決定する案を提示していた。30日の閣僚会議は、日航の取引先に信用不安が広がらないよう、資金繰りを政府が支援する方策を練るはずだった。

 しかし、会議終了後に明らかになったのは支援策どころか閣僚間の溝の大きさだ。藤井財務相は、「(日航の資金繰りを考える)主役は今のところ国交省だ。国交省の意見検討を見守っている」と表明。これに対し、前原国交相は「財務省の方で案を考えてもらう」と述べ、責任を押し付け合うような言いぶりに終始した。

 午後6時からの再協議は2時間を超えながら、「機構による支援決定までは政府が支援する」という、「言わずもがな」(金融関係者)の合意にこぎ着けるのが精いっぱいだった。日本政策投資銀行の融資枠拡大についても、いくらに増やすのか、政府保証はどうするのかなど、詳細は打ち出せていない。

◇支援策二転三転


JAL再建協議後、質問に答える前原国交相(30日、首相官邸で)=中司雅信撮影 この1か月余りの間、政府の対応にはちぐはぐな面ばかりが目立った。

 11月10日、菅副総理、藤井財務相、前原国交相ら5大臣連名の文書を発表し、日本政策投資銀行による最大1000億円の日航向けつなぎ融資に政府保証を付けることを事実上、約束した。

 ところが、今月22日、藤井財務相は突如、「政府保証は付けない」として2010年度当初予算での措置を見送り、約束をほごにした。「官邸の強い意向」(藤井財務相)という。

 二転三転する政府方針に振り回される銀行団からは「増額幅など具体的な数字もないまま、『日航を支える』と言われても」と、強い不信の声が上がっている。

 ここへきて法的整理を持ち出した支援機構の姿勢に対しても、関係者の間に戸惑いが広がる。

 日航は、10月末に支援機構との事前相談の手続きに入って以降、金融債務の圧縮を中心に関係者間で調整を図る私的整理を前提に、再生計画作りを進めてきた。3メガバンクなども数日前まで同じ認識だった。

 支援機構はそもそも、中小、地方企業を私的整理で再生させることを目的に設立された官民折半出資の組織だ。日航の経営陣にも「法的整理を検討の中心に据えることは考えていない」との声が圧倒的だった。

 法的整理になれば、イメージ悪化による顧客離れなどで、再生に必要な資金が増える可能性が高い。

 負担増を強いられそうな金融機関からは恨み節も漏れる。「機構の一部には、めったに機会のない大型企業の『外科手術』をしたいという意欲が強いようだ。患者を退院させる、つまり健全な企業として再生することへの関心が薄いのではないか」

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損失懸念で市場動揺
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◇前原国交相の「火消し」不発
 東京株式市場では30日、日本航空株に売りが集まり、取引開始直後には60円まで急落し、2002年に旧日本エアシステムと統合して以後の最安値を付けた。

 前日終値は88円で、既に100円を割り込んでいるため、この日の下値の制限は58円。ストップ安ぎりぎりの安値で、市場の動揺も大きくなっている。

 30日終値で時価総額は1830億円と、この日だけで570億円以上も吹き飛んだ計算だ。

 法的整理では通常、減資などの手法で株主が責任を負わされ、株の価値が大きく目減りする。産業再生機構が支援したダイエーの事例では、資本金の99・6%にあたる1190億円の減資を実施した。

 このため、日航を巡っても、市場は「法的整理」の言葉に敏感な反応を繰り返してきた。前原国交相が「法的整理しないとは言っていない」と発言した11月18日午前には、法的整理を辞さない構えだと受け取られ、初めて100円の大台を割り込んだ。

 政府が日航向け融資に最大7000億円の政府保証を検討していると伝わった12月7日には、107円まで回復していた。

 前原国交相は30日、「法的整理を前提にはしていない」と強調し、不安の解消に躍起となったが、「閣僚発言に重みがない」(市場関係者)との空気が支配的で、火消しにはならなかった。

 大和証券の松下真一郎氏は、「民主党政権の対応にも問題がある。だれの言葉を信じていいのかわからず、市場に不信感が広がっている」と話している。
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▼所感
『法的整理では通常、減資などの手法で株主が責任を負わされ、株の価値が大きく目減りする。産業再生機構が支援したダイエーの事例では、資本金の99・6%にあたる1190億円の減資を実施した。』
こうなった場合、JALに突っ込んでいる資金60万が吹っ飛んでしまうな。。
かなりやばい。

藤井財務相の辞任で時点が好転することに期待するしかないな。

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